囚われの華
一週間後、再び二人は出逢っていた。

「決まりましたか?」
その言葉に頷く。

「私も婚約者候補は数人いますが、結婚する気は…ありません。
好きな人がいます。
ただ、好きな人には…嫌われてしまいましたが。
でも、想うだけならと…なのであなたが望むだけ婚約者でいます。
それでよろしいですか?」
そう聞く遥に

「ええ、お願いします。」

そういって握手を求める。

手を差し出し、握手をして…別れた。

お互いの父にも事情は話さずに婚約することを告げ、パーティーにも一緒に参加するようになって…

上条さんの優しさに心にすぐっていた痛みはだんだん薄れる。

だからと言って…上条さんのことを好きになるわけでもなく。

ただただお互いの利害の上で婚約者のまねごとをしていた。

それだけでよかった。

数年は…数年後、上条はかねてからの想い人と思いを交わしあって…

遥は純粋に喜んだ。

あの時の女性だと知っていたけれど。

うまく根回ししていたこともあって、婚約解消もごたつかずに出来て二人の結婚式にも招待されて…

幸せだった。かりそめだとしても幸せだと思えた。

それが崩れた。ある日突然。

就職活動時から徐々に崩れていってたのかも…しれない。
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