囚われの華
「そんなっ!!嫌です。」
そういって立ち上がる遥に目の前にいた彰は
「座りなさい!!」
そう声を荒げて言った。

「お前が花嫁修業で家にいるのは嫌だ、でも私の会社にいるのも嫌だ、そう言ったからこちらとしても譲歩して言ってるんだろう。
わがままは大概にしなさい。」
そういって普段は優しい父が怒鳴る。

どうして…わがままなの?
自分で働く場所、探したいのはダメなの?
どうして…?
どうしてよりによって蓮さんのとこなの?
「どうしてそこなんですか?上条さんが…」
言いかけた言葉を遮って

「上条さんがっていうのは知ってるよ。
あちらからもお話はあった。
だが、お前と上条さんが婚約を破棄したのもみな知ってる。
お前があちらの会社に入社すると好奇の視線にさらされる。
それは避けたいからこちらからお断りした。」
そういって
「お前が何を言っても無駄だ。
お前の就職先はこちらで決めた。
ご挨拶に伺いなさい。分かったな。」
そう言って退室させる。

「あなた…」
心配そうにそういう妻に
「大丈夫だ。今は納得できなくてもいつかは…」
そういって微笑む彰にそれ以上何もいわず…

「仕事に行ってくるよ…」
そういって休日にも会社に向かう彰に心配そうにしながら見送るのだった。
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