蒼恋物語 【教師×生徒の恋バナ第一弾】
私は賭けに負けたのだけど、賭けたものを渡す相手がいない場合はどうなるんだろう?



式典は、粛々と進められていく。




終盤にさしかかった時、かすかにクラクションの音がした。


蒼先生が席を立って窓の外を見たあと、教頭先生と顔を見合わせて合図を送った。



教頭先生は、マイクを手にする。


「坂下HRの生徒は、至急校門前に集合しなさい。」


クラスのみんな、何事かと顔を見合わせる。



蒼先生が、講堂の扉を開け放って言った。


「早くしろ、坂下先生が待ってるぞ!」



坂下先生が?



蒼先生のもとに行き、講堂から外を見る。


校門前には、一台の霊柩車が停まっていた。



クラスみんなで、車に駆け寄る。


ポケットの中のものが、カサカサ音を立てた。



お棺のふたはまだ打ち付けていなかったのか、開くことができた。



みんなで、坂下先生と最後の対面をする。


1人ずつ声をかけたのだけど


「何でリコちゃんの名前吹き込むの忘れたんだよ、かわいそー。」


なんて言ってくれた子もいた。



忘れたんじゃなく、わざとなんだけどね。




私はお棺に近づくと、ポケットからクッキーを取り出した。


「坂下先生の不敗神話、破ることができなくて残念です。」



そう言って、賭けたクッキーをお棺に入れた。


 




 
< 207 / 254 >

この作品をシェア

pagetop