蒼恋物語 【教師×生徒の恋バナ第一弾】
「ご家族の方は?

先に講堂に入られましたか?」


僕が聞くと、余合は首を横に振り、講堂へ走っていった。



ほんの一瞬見せた、どこか悲しそうな表情が気になった。




余合の背中を目で追いながら、講堂まで歩く。


「蒼先生は、私が渡した資料にすべて目を通されましたか?」


3日ほど前に渡された厚さ20cmにも及ぶ、膨大な量の書類のことか?


アレを全部って…そんな時間無いし。


「いえ、まだですけど…。」


「そう、ですか。」


坂下先生がため息をついた。




「余合さんは、ご両親を亡くされたばかりです。」


あの資料に、そのことも書かれていたのか…?


だとしたら、坂下先生が僕のために提供してくれたものを、活かすどころか殺してしまったようだ。



「申し訳…ありません。」


「反省は後にしていただくとして、私たちもそろそろ走りましょうか?

教員が遅刻をしては示しがつきません。」


坂下先生に促されて走った。









 
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