【BL】今日も恋に堕ちる
「いや、そんなことないよ。」
忘れられてた人にフォローされてもな…。
俺は思わずため息をつく。
「本当にそんなことないよ。」
「ほんとかよ?」
「うん」
「説得力ゼロ!」
「……俺、人の顔と名前覚えられないんだ。」
歯切れ悪く榊は言った。
「にしてもさー」
「神崎が想像してる以上に覚えられないんだ。」
「え…………」
「その辺の記憶力が他人より未熟なんだ。」
「病気かなんか?」
「そんなとこかな。」
濁した言い方。
聞かない方がいいのかな。
「じゃあ次会ったときには俺のこと覚えてないのか?」
「…分からない。自分や家族のことは覚えてるんだ。」
そっか。
榊って人嫌いなわけじゃなくて……
「だから人と関わらないんだ?」
きっと友達のことを覚えていられないから。
榊は少し目を開いて、小さく頷いた。