【BL】今日も恋に堕ちる


「いや、そんなことないよ。」

忘れられてた人にフォローされてもな…。


俺は思わずため息をつく。



「本当にそんなことないよ。」
「ほんとかよ?」
「うん」
「説得力ゼロ!」
「……俺、人の顔と名前覚えられないんだ。」



歯切れ悪く榊は言った。



「にしてもさー」
「神崎が想像してる以上に覚えられないんだ。」
「え…………」
「その辺の記憶力が他人より未熟なんだ。」
「病気かなんか?」
「そんなとこかな。」



濁した言い方。

聞かない方がいいのかな。



「じゃあ次会ったときには俺のこと覚えてないのか?」
「…分からない。自分や家族のことは覚えてるんだ。」



そっか。
榊って人嫌いなわけじゃなくて……



「だから人と関わらないんだ?」


きっと友達のことを覚えていられないから。



榊は少し目を開いて、小さく頷いた。




< 7 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop