幸せである理由
「…あお…!?」




鎖ごと蒼斗の手のひらに包まれた私の手…




驚いて顔を上げた先には切れ長な眼で真っ直ぐ私を見る蒼斗の姿…





「答えろよ。」





―ビクッ!!!―




その声には拒否権なしの命令という意味が含まれていることなんてすぐにわかった。




蒼斗は…意地悪だ…




私がそれには逆らえないと蒼斗は知ってそう言うのだから…




でも私は言えないから、無駄な抵抗だとわかっていても、拒否の言葉を口にした。




「っ…蒼…斗…はなし…て…っ…」





(駄目。絶対駄目。)




傷つきたくない私はそう自分に言い聞かせるのに必死だった。




だから…





「…雫。」





―プツッ…―





優しい声で私の名前が紡がれた瞬間、何かが切れる音がした…



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