Someday[短編]


唇が離れて、俺の頭の中に浮かんだのは――…なぜか、亜紀さんの泣き顔だった。




「…“亜紀さん”…」


「……え…?」




亜希が、不思議そうに俺の顔をじっと見つめた。


俺、ほんとバカだよ。

簡単に忘れられるわけないのに…
それくらい、本気で好きなのに…


この気持ちは、本物なのに。




「光貴くん…ドコ見てるの?」


「え…?」




突然、亜希はそうつぶやいた。
亜希の突然の質問に俺は戸惑った。




「見てるのは…
今、心の中で想ってた相手は、あたしじゃないよね?」




亜希が、少し悲しそうな顔で俺を見つめた。
今にも泣き出しそうなのを、我慢しているような…そんな表情だった。


思わず俺は、亜希から目を逸らして下を向いた。


< 7 / 15 >

この作品をシェア

pagetop