Someday[短編]
唇が離れて、俺の頭の中に浮かんだのは――…なぜか、亜紀さんの泣き顔だった。
「…“亜紀さん”…」
「……え…?」
亜希が、不思議そうに俺の顔をじっと見つめた。
俺、ほんとバカだよ。
簡単に忘れられるわけないのに…
それくらい、本気で好きなのに…
この気持ちは、本物なのに。
「光貴くん…ドコ見てるの?」
「え…?」
突然、亜希はそうつぶやいた。
亜希の突然の質問に俺は戸惑った。
「見てるのは…
今、心の中で想ってた相手は、あたしじゃないよね?」
亜希が、少し悲しそうな顔で俺を見つめた。
今にも泣き出しそうなのを、我慢しているような…そんな表情だった。
思わず俺は、亜希から目を逸らして下を向いた。