悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~



<side.玲士>



土曜の電車は通勤客が少ないためか、いつもより空いている。

曇り空のせいもあってか観光客の姿も少ない。

雨を含んで重たく立ち込めている、灰色の厚い雲。

――――窓の外に広がる曇天は、まるで自分の心を映しているかのようだ。


玲士は吊革に掴まりながら昨夜のことを思い出していた。

……自分の腕の中で泣き叫んでいた灯里。

灯里の泣き顔を思い出すと胸が軋むように痛む。


あんな抱き方をした自分を灯里はどう思っただろうか……。

それを考えると後悔だけが胸に広がっていく。


灯里を幸せにしたいと思うのに……。

歪んだ嫉妬が玲士を苦しめる。

恐らく灯里は巻き込まれただけだろう。

灯里の意志で婚約者などになったわけではない。

そう分かっていても、憤りを抑えることができなかった。


< 120 / 172 >

この作品をシェア

pagetop