悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
12:00。
玲士は手にしていた書類を机の上に置き、腕時計を見た。
今日は本来であれば休みなのだが、もうすぐ決算発表のシーズンになるため、準備のため休日出勤することとなった。
玲士だけではなく、同課の社員達もほとんど出社している。
玲士が所属しているのは『国際管理財務部』という部署で、管理会計や財務会計のスペシャリストが集まっている。
「……水澤。ちょっといいか?」
「何でしょう」
「この書類、監査部から突っ返されたんだが……。でも俺が見る限り、特に問題ないように思うんだが。お前はどう思う?」
隣の席に座っている長谷部が書類を手に話しかけてくる。
玲士は眉を寄せ、書類を覗き込んだ。
「……過年度税効果調整額に事業税分の調整額が含まれていません。あと貸倒償却の数値が大きすぎます。貸倒損失を倍額で入れているんじゃないですか?」
「なるほどな~……」
ふむふむと長谷部は頷きながら言う。
玲士がこの会社に入社してから一年が経った。
一年の間に肩書は変わったが、仕事内容は前とさほど変わっていない。
長谷部はしばらく書類を眺めた後、玲士をまじまじと見た。