悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
長谷部の言葉に玲士は目を見開いた。
――――羨ましい、などと言われたのは初めてだ。
玲士はこれまで自分自身が幸せかどうかを客観的に見たことなどなかった。
けれど長谷部からすると、自分は幸せな人間らしい。
驚く玲士に長谷部は言う。
「……お前のような人間は、自分のために悩むことはないだろう? 自分のことなら、冷静に判断して迷うことなく最善と思った道を行く」
「……」
「お前は自分のために苦しんだり悩んだりすることはほとんどないだろう。だが奥さんのためなら、苦しみもするし、悩みもする」
「……長谷部さん……」
「自分より奥さんを幸せにしてやりたいって思ってる。……違うか?」
――――違わない。
玲士はぐっと唇を噛みしめた。
けれど、どうすれば灯里を幸せにできるのか、何が灯里の幸せなのか……。
そして灯里の幸せが自分の幸せと両立するのかどうか、わからない。
悩みが顔に出たのだろうか、長谷部はひとつ息をつき、言った。