悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~



<side.灯里>



桟橋の脇に並べられたランタンが夜の海を幻想的に照らし出す。

その美しい光景の中、しかし灯里はむぅっとした顔で玲士に手を引かれて歩いていた。


「………………」


なんだか、熱い。

それはこの格好のせいだろう。


灯里は自分が着ている服をまじまじと見た。

黒いイブニングドレスの上から着込んだ、黒い長袖の上着。

上着の丈は膝のあたりまであり、スリットのほとんどは隠れてしまっている。

玲士がどこからか調達したその服は、一言でいうと……。


――――喪服だ。


タヒチにいるのに、なぜ喪服。

こんなに雰囲気のいい場所を歩いているのに、なぜ喪服。

これからディナーだというのに、なぜ喪服。


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