悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
でも……
母が言ったとおり、昔、晃人に世話になったのは事実だ。
そのお礼をしたいと言う気持ちは、今でも灯里の中にある。
けれどいつ、どうやってその気持ちを伝えるべきなのか……。
それは灯里にもまだわからない。
ちらりと横を見ると、玲士は完璧な笑顔で両親の話に相槌を打っている。
どうやら玲士がさりげなく話題をすり替えたらしい。
しかし晃人の件を玲士が何とも思っていないわけはない。
もし玲士に、玲士のことをとても理解し慕っている10年来の美人な幼馴染なんてのがいたら、自分も嫉妬を押さえきれないだろう。
しかも相手の親に、そんな人間を『結婚式に呼べ』と言われた日には……。
…………。
これは後で絶対にフォローしておいた方がいいだろう。
それは玲士との付き合いの中で灯里が学んだ、自衛策でもある。
灯里はぎこちない笑みを浮かべながら、出されたお茶菓子に手を伸ばした。
―――― 二時間後。
二人は灯里の家族と歓談した後、灯里の家を辞した。
既に陽は落ち、時計は18:00を回っている。
二人は駅前で夕飯を取った後、新幹線のホームへと向かった。