悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
「フツーの会社だったよ。周りの人たちもみんないい人そうだし……」
と言ったところで灯里はふとあることを思い出し、ソファーの脇に置いたバッグを引き寄せた。
中からICカードを取り出し、玲士に見せる。
「これ、あたしのネームプレート。『水澤さん』になったよ」
「……へぇ」
「でもまだ、なんか慣れないんだよね。水澤さんって言われても、誰? って一瞬思っちゃう。一週間もすれば慣れるかな?」
笑顔で言う灯里を玲士が目を細めて見つめる。
その穏やかで愛しげな瞳に灯里は一瞬ドキッとし、息を飲んだ。
結婚した今でもふとした瞬間に玲士に目を奪われてしまう。
と、灯里は朝のコンビニでのことを思い出し、ICカードを鞄に戻して続けた。
「そういえばね。今朝、会社に行く途中でコンビニに寄ったんだけど。そのときに男の人とぶつかっちゃってね」
「……?」
「でも後で会社に行ったら、その人、同じ課の人でね。しかもなんと社長の息子さん。かなりびっくりしたよ~」