悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~



と男が言いかけた時。

突然、男の手が後ろに捻り上げられた。

ぐぁと悲鳴を漏らす男の背後に立っていたのは……。


「……なに? こんな昼間から堂々とナンパ? 頭腐ってるんじゃないの?」


――――ブリザードのような冷酷な声。

顔を見なくても誰だかわかる。

灯里はほっと息をつき、肩を下ろした。


「玲士!」


玲士はスーツにビジネスコートという格好で男の腕を後ろから捻り上げている。

玲士はそのまま男の体をぐいと後ろに引き、軽く足を払った。

手を離すと、男の体はバランスを失ってころんと地べたに転がる。

……まるで、何かの体術でも見ているかのようだ。

自分の夫ながら、その姿は思わず見惚れてしまうくらい格好いい。

と息を飲む灯里の視線の先で、男は慌てて立ち上がりながら、カッと目を見開いて玲士を睨みつけた。

……が、次の瞬間。

頭上から降り注がれる絶対零度の氷の視線に、男はぴしっと凍りついた。



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