悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
「……あっ、すみません!」
灯里も慌ててビールの瓶を手に取ろうとしたが、玲士の父がそれをやんわりと止める。
「気にしないで。さ、どんどん食べてくれ」
「お袋、『今日は灯里さんが来るから』って朝から張り切っててね。まだいろいろ出てくるんじゃないかな?」
亮士がビールのグラスを片手に、楽しそうに言う。
灯里は恐縮しながらも、テーブルに並べられた料理に目を輝かせた。
……しかし。
ふと、廊下に続くドアの方を見ると――――
キッチンで忙しそうに往復する玲士の母の姿と、キッチンの奥の洗面所で何やら水作業をしている理代の姿がちらりと見えた。
……前に見た時と変わらない、長い茶色の髪。
灯里は胸に黒いものが広がるのを感じると同時に、自分はここに座っていていいのか?と疑問に思った。
自分も理代と同じく嫁の立場だ。
と思ったのが亮士に伝わったのだろうか、亮士は軽く笑って言った。
「いいんだよ、気にしないで。遠くからわざわざ来てくれたんだ。さ、いっぱい食べて?」