悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
「会社では関係を隠すことにしてますから。我慢するしかないですよ」
と言った貴之の瞳に影が差す。
その苦しげな影に灯里は首を傾げた。
「……どうかしたんですか?」
と灯里が聞くと。
貴之はしばらく無言で虚空を睨むように見据えた後、メスシリンダーを傾けてビールを飲んだ。
そして大きなため息をつき、ちらりと灯里を見る。
「……僕が社長の息子だというのは、ご存じですか?」
「あ、はい。麻衣子さんから聞きました」
「実はですね。僕に取引先の社長の娘との縁談が上がってまして。僕は麻衣子以外考えられないんですけど、親はその縁談を進めたがっていて……」
貴之は苦悩をにじませた顔で言う。
灯里は突然のヘビーな話にひぃと内心で息を飲んだ。
縁談って……。
社長の息子ともなればそういうのもあるんだ、と思いながら灯里はこそっと聞いてみた。