悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
「宮村さんは、どうするつもりなんですか?」
「もちろん断るつもりですよ! でもまだ親に麻衣子のことを言っていない手前、どう言って断ろうか……それでずっと悩んでまして……」
貴之は呻くように言う。
普段爽やかな印象の貴之がここまで辛そうな表情をするとは、相当悩んでいるのだろう。
確かに付き合っている相手がいるのに親から縁談を持ってこられては、悩むのも無理はない。
貴之はハァと辛そうに息をついた。
「実を言うと、僕と麻衣子の間ではもう結婚しようと決めてるんです。これから婚約指輪を選ぼうって……。でもそんな矢先に、まさか父が縁談を持ってくるとは……」
「……」
「僕がちゃんと動かなければ、麻衣子との将来はない。そうわかっていても、どうすればいいのか、考えれば考えるほどドツボに嵌まってしまいまして……」
「……なるほど……」
ふむと灯里は頷いた。
結婚は一生の問題だ。
しかし社長の息子ともなると、自分の思惑だけではなく周りの人間の思惑も絡んでくる。
真面目な人間であればあるほど、周りのことを考えて悩んでしまうのだろう。
悩むのは、貴之が真面目な人間だという証でもある。