悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
「……いや、その。無理です、宮村さん……っ」
「大丈夫。僕に恋人がいるとわからせるだけでいいんです」
と言った貴之の後ろから。
ふいに声が割り込んできた。
「……へぇ、恋人ですか。なるほどね?」
――――その、低いテノールの声。
忘れもしない、この声。
灯里は反射的にぴしっと凍りついた。
恐る恐る振り向いた灯里の目に映ったのは……。
絶対零度の微笑を漂わせた、自分の夫の姿だった。
「……っっ!!!」
玲士は腕を組み、うっすらと笑みを浮かべている。
――――その、悪魔としか言いようのない微笑み。
必死にこの状況を説明しようとするも、恐怖のあまり喉が凍りつき、言葉が出ない。
ヒィィィと内心で絶叫する灯里の前で、玲士はその形の良い唇を歪めて嗤った。
「突然申し訳ございません。ちょっとお聞きしたいのですが」
「……は、はあ」
「そちらにいらっしゃる女性とはどういったご関係なのでしょうか?」