純潔の姫と真紅の騎士
世界は黒水晶によって操られ、踊らされていた。
その世界を変えるため立ち上がったのは<聖剣士六士>を側近として仕えている世界一大きな国、ダンドール大陸国王ジャルーヌ。
それを阻止しようと動いたのは黒水晶によって操られている黒の国と呼ばれている国、ドータル国王クロユリ。
俺たち<聖剣士六士>はダンドール大陸国王ジャルーヌを尊敬し、ジャルーヌの言うことがすべて正しいと思っていた。
本当に彼の言葉はすべてが正しい。
だが、ドータル国王クロユリとそれを尊敬する者たちはそう考えていない。
黒水晶によって操られていることにも気がつかず、世界を破滅へと追いやっている。
それに対抗するために……俺たちは戦場に立つ。
命を亡くしてまでも守りたいもの。
俺たちにはそれがない。
だから、今は世界を守るために命を放り捨てている。
そんな人生、つまらないと思うかもしれないが、俺たちにとって戦場とは快楽の場であり、酒を飲んでいるときよりも楽しい。
自分と同等の強者を戦った時は血が騒ぎ、狂乱するかのように剣を振り回しながら乱舞することもある。
それほど、俺たちは戦いに没頭しているのだ。
だからといって人を殺すことが好きというわけではない。
人を殺したあとはとてつもなく罪悪感や消失感を抱く。
そしてふいに悲しくなる。
俺たちは互いにその気持ちを共有することはないが、皆が皆同じ気持ちなのは分かっていた。
小さいときからともに戦い、ともに生き延びてきたのだから。
<聖剣士六士>というのは、ダンドール大陸国王ジャルーヌに側近として仕えている戦士のことである。
ダンドール大陸一強い六人がもらうことのできる称号だ。
俺たちはその称号をもらい、日々戦っている。
負けたことはない。
俺たちが強いのだから。
そして、俺たちは勝つことに悦びを覚えていた。
それは心の奥底で隠していたことだったが、確かだった。
だから気がつかなかった。
彼女が黒い靄の中で泣き崩れながらも人が死んでいく現実を細い体で受け止めていることを。