純潔の姫と真紅の騎士
異変に気づいたのは、城の中に入ってからだった。
いつもは優雅に流れる空気が、今日は慌ただしかった。
「あ!アリウム!良かった、貴方ではなかったのね」
「それは、どういう意味ですか?」
あたしが眉をひそめて訪ねると、側近の女が辺りを見回しながら説明してくれた。
「それが、さっき城の地下から女の人の悲鳴が聞こえてきたのよ。それで、何かあったのかと思って、スイレン様がいらっしゃる地下にいったのだけれど……特に誰もいなかったの。だから、聞き間違いだと思ったのだけれど……。トールさんが見つからないのよ。いつもは仕事場にいて、真面目に仕事をしているのに……」
「お出かけになられたのでは?」
「トールさんは、お出かけするときは必ず誰かに伝言するわ。だけど、そんな伝言誰も聞いてないの。おかしいと思わない?あんな真面目なトールさんのことだから、言い忘れたなんてことありえないし……。それに貴方も休暇でいなくなってたから……不安で……」
「それで、トールさんはいつからいなくなったんですか?」
「さっきの悲鳴が聞こえる前から見た人はいないって言っているわ」
それを聞いた瞬間、嫌な予感がした。
もしかして……。
「あの!今から兄を呼んで来てもいいでしょうか!」
「貴方のお兄様……?別にいいけれど、どうして?」
「……ちょっと心当たりがあって……。でも、実はその兄は<聖剣士六士>の一人なんです」
女が少し顔を歪めた。
「どういうこと?」
「今まで黙っていてすみませんでした。あたしはダンドール国の人間なんです。スイレン様と一緒にいたくて、素性を隠しておりました」
「何故それを今言ったの?トールさんがいなくなったのと関係あるの?」
「少しあるかもしれません」
「……そう。いいわ。<聖剣士六士>と言っても、誰もその人たちの顔をみたことがないのだから、大丈夫でしょう。トールさんが今どんな状況にあるのかは知らないけど、もしも危ない目に合っているのだとすれば、もう貴方に頼るしかないようね」
「ありがとうございます」
「馬に乗っていったほうが早いわ。厩から馬を借りて行ってきなさい」
「はい!すぐに戻ってきます!」
いつもは優雅に流れる空気が、今日は慌ただしかった。
「あ!アリウム!良かった、貴方ではなかったのね」
「それは、どういう意味ですか?」
あたしが眉をひそめて訪ねると、側近の女が辺りを見回しながら説明してくれた。
「それが、さっき城の地下から女の人の悲鳴が聞こえてきたのよ。それで、何かあったのかと思って、スイレン様がいらっしゃる地下にいったのだけれど……特に誰もいなかったの。だから、聞き間違いだと思ったのだけれど……。トールさんが見つからないのよ。いつもは仕事場にいて、真面目に仕事をしているのに……」
「お出かけになられたのでは?」
「トールさんは、お出かけするときは必ず誰かに伝言するわ。だけど、そんな伝言誰も聞いてないの。おかしいと思わない?あんな真面目なトールさんのことだから、言い忘れたなんてことありえないし……。それに貴方も休暇でいなくなってたから……不安で……」
「それで、トールさんはいつからいなくなったんですか?」
「さっきの悲鳴が聞こえる前から見た人はいないって言っているわ」
それを聞いた瞬間、嫌な予感がした。
もしかして……。
「あの!今から兄を呼んで来てもいいでしょうか!」
「貴方のお兄様……?別にいいけれど、どうして?」
「……ちょっと心当たりがあって……。でも、実はその兄は<聖剣士六士>の一人なんです」
女が少し顔を歪めた。
「どういうこと?」
「今まで黙っていてすみませんでした。あたしはダンドール国の人間なんです。スイレン様と一緒にいたくて、素性を隠しておりました」
「何故それを今言ったの?トールさんがいなくなったのと関係あるの?」
「少しあるかもしれません」
「……そう。いいわ。<聖剣士六士>と言っても、誰もその人たちの顔をみたことがないのだから、大丈夫でしょう。トールさんが今どんな状況にあるのかは知らないけど、もしも危ない目に合っているのだとすれば、もう貴方に頼るしかないようね」
「ありがとうございます」
「馬に乗っていったほうが早いわ。厩から馬を借りて行ってきなさい」
「はい!すぐに戻ってきます!」