純潔の姫と真紅の騎士
スイレン～睡蓮～
雨が激しく窓を殴る。

室内は異常なほど静かで、カチカチという時計の音に混じってカリカリと何かが扉を引っかく音が聞こえる。

それでも誰も扉を開けに行かないのは、アネモネの話を聞いていたからだろうか。

「カイ。この部屋の主はお前なんだから、お前が開けろよ」

ハンスがカイを売った。

ため息をつきつつ、自室の扉を開けると、そこにはちょこん、と座った”金目の猫”がいた。

カイが驚いて口を開こうとした瞬間、ロビーの扉が大きく音を立てて、開かれ、強風が部屋の中に吹き込んだ。

強風に混じって雨水も入ってきたため、カイたちの髪はすぐに濡れた。

ふっと、金目の猫が後ろを振り返る。

猫に続いてカイたちの目も開かれた扉の向こう、外へと向けられた。


外には、一人の少女が倒れていた。
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表紙・目次

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