純潔の姫と真紅の騎士
この世界は全て、美しいもので造られている。
青く、時には緑色に輝く海、それと同化する空、白い雲、眩しすぎるほど煌めく太陽。
どれも欠けてはならないもので、人々はその下で生を全うしている。
その世界で生きてみたいと思った。
生きて、自分の存在を誰かの記憶の中に残したいと。
広い、ひろい、このセカイで、独り死んでゆくのはいやだと思った。
けれど、そんな自分とは裏腹にこのセカイから逃れたいと思う自分が存在した。
人々から自分に関する思いも、記憶も、何もかも消し去って、奪い去って、どこか遠い場所から眺めたいと思った。
両方の願いを叶えることは不可能だ。
だから、後者を取った。
後者を、選ばなければいけなかったのだ。