純潔の姫と真紅の騎士
「<聖剣士六士>を呼べ」
ダンドール大陸国王ジャルーヌが低い響く声で命じると、側に仕えていた兵士たちが「はっ」と短く返事をし、一歩足を踏み出したとき、ギギ、と重い音を立てながら頑丈な鉄の扉が開かれた。
光を背にして立つ六つの影。
それは誰もが夢見る地位につく者。
だが、その姿はまだ青年と呼べるものだった。
その六人の中心に立つ細身で長身だが、しっかりとした筋肉がついていた青年が口を開けた。
扉が開けられたことによって入ってきた風が彼の短い赤茶色の髪を撫でた。
「……仕事ですか?」
扉がガコンッと重い音を立ててはっきりと見える青年の顔。
男でも見ほれるほど整った顔をしている青年は笑みを浮かべることもなく立っている。
ジャルーヌは彼の強さをしっかりと知っていた。
いや、彼ではなく彼らであろうか。
その六人の中でもリーダーとして毎回ジャルーヌがお世話になっているのが一番先頭に立っているこの男、ディティル・カイ。
彼はすぐに行動に出るし、自分が思っていることも分かってくれるため、次の行動を言わなくても動いてくれる。
そのため、ジャルーヌはカイがお気に入りだった。
「あぁ。ちょっと向こうの国で動きがあり、砂漠の国で戦が始まった。あそこが落ちてしまうのは困る。戦力が足りないらしいから行ってくれるか?」
カイは胸に手を当てた。
「御意。……三人で足りますか?」
「あぁ。そなたたちの実力なら二人で充分かもしれぬ。全員殺害を頼みたいが、二人ほど必要だ。二人は拘束し、後はすべて殺せ」
ジャルーヌの言葉を聞き終えるとカイはすぐに部屋からでていった。
その後に<聖剣士六士>の五人が続いた。
その姿は凛々しく、堂々たるものだった。
(……さすが聖剣士六士……。そなたたちがいなければこの国は今頃……)
死んでいたでいたであろう、という言葉をジャヌールは心の中でつぶやくことはせず飲み込んだ。