黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
◆「実は一年くらい前から、隣りのクラスの子と付き合ってるんだ」

プライドを優先させ、ウソをついた。


…しかし。


「…七夜、それ……嘘だろ?」


俺の偽証からものの数秒も経たないうちに、司からの『異議あり!』がはいる。

驚いて司のほうを見れば、猜疑心120%な顔で、俺のほうを軽く睨んでいる。


…な、なんでウソだと気づかれたんだ…!?

失言なんてしてないよ俺…!?


……いや。


…でも司もまだ、確信を持って疑ってるわけじゃないだろ…。

…そうだっ、どうせハッタリだ…!

…これはハッタリにちがいない!


俺は自己フォローするために慌てて言った。


「な、なに言ってるんだよ司?
こんなことにウソついたって、何の意味もないだろ?」


重ねたウソを、夏樹がアシストする。


「せや司。
こんなんウソついたってしゃあないやろ?」


そう言って、困ったような表情を司に向ける。

…夏樹GJ!


しかし何の根拠があるのか、司は全く引き下がらない。


「意味ならあるよ?」


夏樹にそう言ってから、もう一度俺の顔に目をとめる。

そして司特有の、いたずらっぽい笑顔でニヤッと笑った。

普段の俺だったら、『やっぱり司はかわいいな…』とか気持ちの悪いことを思ってしまいそうな、その笑顔。

しかし、今の俺がその笑顔から得られるのは、焦燥感だけ。

冷や汗をかきそうな心持ちで、


「い、意味ってなんだよ!?」


と、どもりながらも辛うじて言い返してはみたものの、もうやばい…。

動揺がはんぱない…。


…な、なんで確信したみたいにそんなにズバズバ言ってくるんだよ司は…!

…こんな見栄のためのウソがばれたら、俺死ぬほど恥ずかしいしみっともないし立場ないじゃんか…!!


そんな泣きそうな胸の内を見透かしてか、それとも俺の表情から焦りが見てとれたのか、司はもう一度ニヤッと笑った。

そして口を開く。
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