黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
「…で?」
…意外なことに、そう言ったのは翔太の方だった。
しかしどっちがそれを言ったとしても、今の『で?』に対する答えは持ち合わせてはいない…。
黙ったままの俺に対し、再び翔太が口を開く。
「そんなくだらねーこと言うために、わざわざこんなとこまで来たわけ?
転校生の七夜くん……だっけか?
…お前ちょっと顔がいいからって、調子にのってるんじゃねーの?」
翔太のキツネのような目が、ギロリと見開き俺を睨む。
初めて見る、悪魔のようなその三日月目に、情けないことに全身がびくついた。
……翔太は、智紀、良雄を含めた、うちのクラスを代表する3不良だったけど、その中でも比較的こちらよりだと思っていた。
無害な、一般生徒よりだと。
なぜなら、校則違反全快な見た目とは異なり、いわゆる一般生徒と呼ばれるような普通のクラスメイトとも、楽しそうに話していることが時折あったからだ。
そんな翔太だったから、今までは油断…というか、あまり危険な人物として意識はしていなかったんだけど、今は、正直怖い…。
しかしただ黙っていると、さっきの対良雄の時の二の舞になってしまうと思い、俺は即座に反論した。
「そ、そんなことない…!
調子になんかのってないし、自分の顔がいいだなんて、全然思ってない…!」
勢いだけでそう言い切り、奴らが座る後部座席のほうを力弱く睨む。