黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□

バス内で

……………………。


………………。


…………。


……バスの車内には、大勢のクラスメイト達の声が響いている。


「ねえ七夜(ななや)くん、どうしたの、さっきから?」


俺の隣……通路側の座席から声が聞こえた。

俺は今まで窓の外へと向けていた視線を、その声の方に向ける。

「…ん? ああ。
なんだか、見たことのあるような景色だな…と、思ってね…」

視線の先にあった、まるで黒髪ショートカットの少女のように見える男子生徒…… [ 白川 裕也(しらかわ ゆうや)] にそう答えた。

裕也はその言葉に、まつげの長い大きな目をぱちぱちとさせながら、少しだけ身をのりだす。

そして、今さっきまで俺が見ていた窓の外に視線を送った。

「…えー、そうなの…?
ぼくには、ただの暗いだけの山道にしか見えないんだけど…。」


…少しだけ不満そうな声だ。

でも確かに、裕也の言うとおりだった。

俺も裕也につられてもう一度、なんとなく窓の外を見てみる。


…が、そこには、何の変哲もない、闇に包み込まれかけた道路沿いのガードレール が流れているだけだった。

遠くのほうに広がる眼下の平野に、鬱蒼とした森林に埋もれた、何か廃病院だか廃 アパートだかの大きめな建物がかろうじて見えたが、それだって特に珍しい物でもない。

ありふれた廃墟…といった感じだった。
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