黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
「…ひゃはは、マジうける!
良雄(よしお)くん、ソレ、最っ高に面白いんですけど♪」
…この特徴的な笑い声と内容は、おそらく翔太(しょうた)のものだ…。
その笑いがバス内に響き渡った瞬間、ほんのわずかにだが、周囲の声がトーンダウンした気がした。
そのせいか、さっき聞こえた会話の続きが、自然と耳に入ってくる。
「だろぉ、翔太?
んでぇ、その後さらに追加でボコってやったらよぉ、『お願いですから殺さないでください!』…つって、泣いて土下座してくんだぜぇ?
…そのゴミが。
ははは!」
…聞こえてきた良雄(よしお)の返答は、あまり気分のよくなるものではなかった。
隣りを見れば、裕也が微かに青ざめた表情をしており、これも微かにだが、体をこわばらせているように見えた。
次に上方を見上げる。
司は、あからさまではないが、明らかに嫌悪の表情を浮かべていた。
顔は俺達のほうに向けたままだが、視線だけは声のほうに向いている。
対する隣りの小町屋は、表情こそ司に近い感じだったが、その視線はなぜか、前方の運転席の方へと向いていた。