黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
その顔を見て、委員長は冷たい表情を怪訝なものへと変化させた。


「もしかしてあなた達、涼瀬(すずせ)くんのところに遊びにきただけ?」


淡々としたメゾソプラノで、委員長がそう続ける。


……鋭いな委員長……。


さすがにこの司よりも、成績優秀なことはある…。

…まあ単純に、俺のリアクションがまずかっただけかもしれないんだけど…。


直接委員長にそう聞かれた司は、明らかに困惑している。

あれは何か、必死に言い訳を考えている顔だ。

その後ろに立っている裕也も、ようやく自分の提案の大胆さとまずさに気づいたのか、しかられた子犬のような目で委員長を見つめている。


俺は裕也が謝りだす前に、急いで代わりに言い訳しようと、彼女の席まで歩み寄ろうとした。

すると。


「…バスに乗る前、涼瀬が具合が悪かったみたいでさ、あたし達心配で見に来たのよ。
だから許して、綾ちん?(願)」


…司の前に割り込んでそう言ったのは、小町屋だった。

その台詞を聞いた時、『意外と悪党だな小町屋…』と思った。

だけど小町屋の機転に、素直に感心してしまったのも事実だ。

『お願い♪』といった感じで懇願の表情をつくり、両手を合わせてお願いする仕草をつけるあたりもそつがない。


裕也と司は、小町屋に一回視線を移したあと、おそるおそる委員長の顔色を伺う。

彼女は、俺たち全員の顔を見回し、最後に裕也を見た後、口を開いた。


「…なるほど、ね…」


考え考え、ゆっくりとそう言った。

直後、なぜか涼やかな笑顔をこちらに向ける。
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