実鳥森の少年の初恋
困った様子のジンを見て母親のメイは
はっきり明るい声で言います。
「日本人よ。ただ、瞳がね。緑色だったの。
ジンは、私に似て黒なんだけど、角度で
緑に見えることも、あるみたいね」

「じゃあ、お父さんがハーフだったのかもね」
マイが言います。

「そうかもしれないわね・・・
ジンが小さいころに亡くなったし
写真が苦手な人だったから、残っていないのよ。
それで、ジンも覚えていないのよね」
メイが考えながら話します。

「父さんの写真、ないよね。見たかったな。
僕、覚えていないし」
ジンは、寂しそうです。

マイは、あわてて話題を変えます。
「そういえば、この不思議色のコスモス、
きれいですね」

「ええ、マイちゃんのお店で買ったのよ。
不思議な色よね」

「うちのお店ですか。やっぱり」
マイが首をかしげています。

そこへ、2階のほうから窓をコツコツたたく音が
聞こえてきました。

「ペリドだよ。行ってみる?」
「うん」

「じゃあ、2階に行くね」
ジンが母親のメイに言うと
メイが頷いています。

ふたりで急いで2階へ登ります。
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