実鳥森の少年の初恋
「あら、どうしたの?」
母のメイが聞きます。

「母さん、あの不思議色のコスモスを
ペリドに見せるから、花瓶ごと持っていくね」

ジンは、言いながら、不思議な色のコスモスが入った
花瓶を手にしています。

「そうね。もしかしたら、森の精人界の花かもしれないわ」
そういう母です。

部屋にもどったジンは、ペリドにコスモスを見せます。

「これなんだ」

(あ~これは、森の精人界の花さ。
虹が出たときによく咲くんだよ。
虹色を反射しやすいんだろうな。しかし
なぜ、ここにあるんだ?)

「ペリドが魔法でこの花を作ったのではないの?」
マイが聞きます。

(いや、俺じゃないよ。魔法で作れる花じゃないし。
森の精人界で虹が出たときに咲いているのをよく見るだけさ)

「不思議だな」

(うん、なぜだろうね。この花はどこから摘んだのかな?)

「私のお店でジンのお母さんが買ったそうなの・・・」
マイが言います。

(そうなると、仕入れ先の人が見つけたわけか。
まれに、人間界でも咲くのかもしれないな。
いや、もしかしたら、人間界に森の精人が迷いこんでいるのかもしれない。
そうなると、その精人はもどれなかったら危ないよ。
3日間しか人間界では体がもたないと言われているからな)

(ちょっと探してくるよ。見つけたら知らせる)

ペリドは、あわてた様子で再び窓から出ていきます。
呆然と見送るジンとマイです。
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