実鳥森の少年の初恋
「コスモスの花は、今は近くの花農家から仕入れているわよ。
あ、でもこの前は、違う方からほんの少しだけ仕入れたわ。
なんだか、事情があるらしくて・・・
でも、きれいな不思議な色のコスモスだったのよ。
そういえば、ジン君のお母さんがたまたまその後
こられて、そのまま買っていかれたわ。
あのコスモスがどうかしたの?」

「その不思議なコスモスを売った方の居場所とか
わかりますか?」

「え?たまたま、この店に直接こられたのよ。
花を買ってほしいとおっしゃって」

「どんな感じの人だった?」
マイが聞きます。

「そうね。お花があまりにきれいで見とれていたんだけど
ちょっと困った感じだったわ。深い緑色の帽子を被っていて
顔はよく見えなかったのよ。たぶん男性だと思うけれど
考えたら不思議ね。ちゃんと覚えていないみたい」
マイの母は、首をかしげています。

「ありがとうございます。どちらに向かわれたか
ご存知ですか?」

「たぶん森の方角へ向かっていたと思うわ。
ふらふらした感じだったのよ。
森のコスモスかしらと思ったけれど、あとで確認したら、
森のコスモスは、普通のコスモスだったわ」

「そうですか。やはり森かもしれない・・・」
ジンが考えています。

そのとき、頭上にペリドが飛んできて
「ジン、ちょっと手伝ってくれ。見つけたんだ」
< 51 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop