実鳥森の少年の初恋
ジンは、思わずマイを探しますがいません。

「マイは、先に帰っちゃったよ」

「あ、そう」

「じゃあ、帰ろうか?」
みゆが当然のように言います。

「お昼にも言ったけど、ひとりで
帰りたいから、ごめん」

さっさと歩き出すジンです。

「待ってよ~~方角いっしょだし」
追いかけるみゆです。

しかし、ジンは不機嫌なまま
振り向きもせず、歩き続けます。

「あ~~機嫌悪いな。もういいや」
あきらめて、みゆは追いかけるのを
やめました。

黙々と歩き続けて
家に着くジンです。

ものすごく不機嫌になっています。
こんなに機嫌が悪いのは、いつ以来でしょうか。

気を取り直して玄関をあけると・・

メイの声がします。

「ジン、おかえりなさい」

「あ、母さん、今日は早いね」

「ええ、今日は用事があって早く帰ってきたのよ」

「用事?」

「そう、マイちゃんのお母さんと待ち合わせなの」

「え?マイのお母さんと?」

「そう、いっしょに小学校の役員になっていて
今日は見回りをする番なのよ。それで、出かけてくるわね」

「見回りか~。母さんたちが今月当番なんだ」

「そうだ。ジンもいっしょにマイちゃんところに
行く?」

「お花を買いたいんだけど、当番だから
時間がかかるし、終わるころは、お花屋さんも
しまっているし、たぶん店番はマイちゃんよ」

「あ、いいよ。うん、行くよ。お花買ってくるよ。
母さんが好きな花を選んでおくよ」
急に嬉しくなるジンです。
マイに会えると思うと心がワクワクします。

「最近、マイにもゆっくり会ってないし、いっしょに
お店番しててもいいかな?」

「マイちゃんのお母さんがいいと言えばいいんじゃないの?」
メイは、言いながら、息子の反応を見ています。

「頼んでみよう。うん」
はりきっています。
< 64 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop