実鳥森の少年の初恋
土曜日です。

ジンとマイは、久しぶりにふたりで
森にきています。

「わぁ~~。キラキラしてるね」
マイは、走り出します。

森の隣に流れる川の水面がキラキラと
太陽の光を反射して輝いています。
魚がぴょんとはねて煌めきます。

まぶしそうにジンも見つめながら
川のそばに走ります。

(よぉ~ふたりでくるとは久しぶりだな?)
頭上から声がします。

振り返ると大きなクスの木の枝に
ペリドが止まっていました。

「ペリド、久しぶりね。会いたかったわ」

(マイ、会いにきてくれてありがとな。
ジンだけだと盛り上がらなくて、困っていたのさ)

「ペリド、そんな・・
いつも笑っていたじゃないか」

ジンが抗議します。

(まぁ、いいじゃないか。ふたりがきてくれて
喜んでるんだからさ)
ペリドは、涼しげな声で言います。

「森の精人界には、帰ってみたの?」
マイが聞くと

(あ、うん、入り口がわかったから2回くらい帰ってみた。
マリモに会ったぞ。また、人間界にきたいと
行ってたな。よろしくだそうだ)

「行き来できるようになったってすごいな」
ジンが少しうらやましそうに言います。

「ジンも、森の精人界へ行ってみたいの?」
マイが聞きます。

「うん、父さんが生まれた場所を見たいんだ」
思わず言ったあとで、しまったと
マイのほうを見ると

マイは、ぽかんとしています。
はっと我にかえったように
「それって、あの、お父さんは日本人って
言ってなかった?森の精人なの?」


「いや、あの、その・・」
下を向いて困ってしまうジンです。



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