五分で恋におちました。
「とりあえず大通まででましょう。」


そう言って彼は私に手を差し出した。


私は少しどきどきしながら彼の手を取り立ち上がった。


立ち上がれはしたもののまだ足が少しふらついてしまう。


「それじゃ歩けませんね………仕方ない、僕につかまってください。」


そう言って腕が差し出された。


「む……無理です!出来ません…………。」


私は今まで浩介以外の男の人に触れたことなど無かった。


むしろ男の人と会話だって仕事以外でまともにしたことがない。


男の人につかまって歩くなんて私には考えられなかった。


「困ったな……。さすがに僕はあなたをここに置いてくことは出来ません。この暗い所にずっといるのも危険だと思います。無理やり抱き抱えて行くわけにいきませんから僕につかまってもらえませんか?」


そう言われ私は恥ずかしくなった。


この人は好きで私の事を助けたわけじゃないし私を女って意識してるわけでもない。


なのに私は何この男の人を意識して一人で盛り上がっているのだろう。


この人スーツ姿だしきっと仕事帰りで疲れているのだろう。


これ以上迷惑かけてはいけない………。


「お……お言葉に甘えてし……失礼します。」


私はなるべく体に触れないようにそっと彼の腕をつかんだ。





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