”キレイ”な愛
綺樹は眠りが浅い。

それは隣に寝ていて良く知っていた。

こんなところで、大きな声で呼んでも起きないなんておかしい。

熱はないし、呼吸が乱れているわけでもない。

さっき風邪薬を飲んでいたから、そのせいか。

涼は通りに目を走らせてから、タクシーの空車が捕まらなさそうなのに、西園寺の車を呼んだ。

並んで車の後部座席に座っていると、綺樹の重みと温かみが懐かしかった。

倒れないように回している腕に触れる綺樹の体の感触。

この腕の中に綺樹の身体を収めてしまうと、もうどうでも良くなってしまう。

嘘をついていようと、男と遊び三昧だろうと。

戻ってくるなら、どうでも。
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