”キレイ”な愛
「覚えていなくても、彼のことが気になるらしくてね。
 そっけなくしているけど、分かりすぎて、なんだか可愛い」

「父親の台詞とは思えませんが」

「うん、そうかな。
 でも、綺樹には想い合っている人と、素直に気持ちを通じ合わせて、幸せになってほしい」


尚也とその妻の過去を知っているだけに、言葉に重みがあった。


「早いですね。
 一枝さんが亡くなって15年ですね」

「早いね」


尚也の顔に静かな微笑が浮かんだ。


「綺樹には、愛する人に死なれて、後悔しながら生き続けるという人生を送って欲しくないな」


さやかは何も言う言葉が無かった。
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