”キレイ”な愛
理解するのに数秒かかった。

自分の呼吸音が聞こえる。

ざーざーとして、すごく耳障りだ。


「綺樹?」

「無事なんだよね?」

「ええ」


さやかが答える前にあった、一瞬の間が怖かった。


「わかった」


綺樹は冷たくなった指で通話を切った。

茫然として部屋を眺める。

空気が。

部屋の空気が塊となって襲い掛かってくる。

自分の世界から兄がいなくなってしまったら、後、私に何が残る。

くちびるを震わせてから、弾かれるように動き出した。
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