”キレイ”な愛
   *
少し年上の美人が2人も相手で楽しくないわけがない。

でもこのまま今夜を過ごすまで踏み切れない。

涼は時計に目を走らせると、あっさりと“また”と告げて席を立った。

ドアを開けるとはっとしたように綺樹が振り返った。


「ああ、涼か」


悪かったな、おれで、と言いかけて、綺樹の様子に気が付いた。


「どうした?」


綺樹のスーツケースが傍らにある。


「急遽、ロンドンに行くことになって」

「仕事?」

「ここの払いは終わっているから、ゆっくりしていって。
 帰るときはフロントに言えば、ヘリが来るし、そのままチェックインタウンターまでいけるはずだ」

「仕事?」


涼は静かに綺樹の様子を観察して、もう一度繰り返した。
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