”キレイ”な愛
綺樹は斜めに顔を伏せた。


「さやか、自分を悪く言う必要はないよ。
 反対の立場だったら、同じことをした。
 女王。
 私はあなたの駒に過ぎないんだから」


自虐的すぎる発言は皮肉でもあった。

さやかは黙って綺樹を見つめる。


「綺樹」


さやかが何か言いかけると、集中治療室のドアが開いた。

長身の医師が出てくる。

マスクをとり、さやかを見つめた。

冴え冴えとした美貌とはよく言ったものだ。

女性にはこの冷たさが反対に魅力となるのだろう。
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