”キレイ”な愛
「じゃあ、ついてきて」


呟くように言うと綺樹はすっと顔を俯かせた。

無言で暗く長い廊下を歩いていく。

真夜中だからか、不気味な静けさだった。

ロビーにたどり着くと、薄暗いオレンジの光に満たされていた。

その先の自動ドアの向こうには、夜の闇に溶けた黒い車が待っている。

綺樹は足を止めて、それを長い間見つめていた。

涼は時間の長さに綺樹の横顔を伺った。

くちびるを少し開いて呼吸をしている。

ゆっくりと顔を向けた。
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