”キレイ”な愛
12.そして再び・・・
  *

車の中には既にフェリックスが待っていた。

細身の三つ揃いのスーツを着て、長い足を組み、嫌味なほどに格好が良かった。

流れている音楽に耳を傾けているのか、綺樹を見もしなかった。

綺樹も音楽に集中する。

BachのFantasia&Fugueだろうか。

勢いのある音の粒が脳をたたき、覚醒させる。

もう一つ気付いた。


「Egoiste」


綺樹はぽつりと言った。

車内にたちこめている香り。


「なぜその香水を?」

「なぜ?」


質問にあざ笑われた気配があった。
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