”キレイ”な愛
4.
 *
飲みすぎた。

立ち上がって、視界が揺れる。

相手の桐島にイライラして、ついついワインの杯が進みすぎた。

さやかが締めの挨拶に立ったのを口実に、綺樹は愛想を口にして逃げ出した。

それ以上、付きまとわれないように、従兄弟の達馬の父親を見つけて話しかける。


「おじさん」


達馬に似た目元が笑う。


「綺樹ちゃん。
 久しぶり」


製薬会社の社長だけに、品のいいスーツをきていた。


「これから色々と関わりが出そうだけど、お手柔らかに頼むよ」


にこやかな笑顔は育ちの良さが出ている。

似た笑顔なのに、息子の達馬の笑顔は鋭さが隠せない。

幼い頃から母方の“組”という組織を継ぐ教育をされたからだろうか。


「兄さんは、元気?」
< 23 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop