”キレイ”な愛
父は年を経るごとに、死んだ妻に似てくる娘を見るのは辛そうだった。

分かっているから、島に距離を置き、父に距離を置く。

今日は完全に自棄酒だ。

さやかの挨拶の最後にふらつかずに立ち、愛想笑いをしてお辞儀できたのは、奇跡だと自分で思った。

これで今日は解放だ。

何人かとにこやかに握手を交わしながら、ロビーを出口に向っていると、桐島がまた声をかけてきた。

綺樹はとっさに、すがる藁がないか、辺りを見回した。

人混み越しに、ちょうど顔を向けた涼と目が合う。

一瞬、見つめあった後、涼が歩み寄ってきた。
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