”キレイ”な愛
「涼。
 待たせた」


綺樹は涼の腕を抱きつくように掴み、引きずるようにその場を後にする。


「悪かった。
女にすぐ戻るって言っていこう。
 化粧室まで連れて行ってくれたら、解放する」


涼は女連れで、パーティー会場を後にしようとしていた。


「また、吐くのか?」


からかう口調なのに、綺樹は見上げた。


「ずいぶん飲んでたもんな」


笑いの含んだ目で、ちらりと見下ろされた。

自分の苛立ちを見破られていたようで、ばつが悪い。


「ああいうタイプの男は嫌いなんだ。
 化粧室でしばらく時間を潰して、やり過ごす」


残してきた女へと向っていた方向から、涼は右に変えた。
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