”キレイ”な愛
涼は綺樹の隣のドアに寄りかかった。


「地下鉄で何かあった?」

「別に」


答えないだろうとは思っていた。


「おまえが、男はひっかける対象でしかないのと関係ある?」


綺樹は無言のままだ。


「男とのゲームは上手いけど、普通の恋愛に対しては、あんまり経験ないよな」


綺樹の頬が動いた。


「最初の男に遊ばれた?」


さっと顔を上げて、射抜くように涼の瞳を見つめた。


「西園寺 涼。
 これ以上続けるなら、私は次の駅で降りる」

「わかった。
 悪かった。
 ただ、おまえのこと知りたいし、手が貸せることがあるなら貸したいだけ」


綺樹は顔を床に向けると、細く長く息を吐き出した。

くつくつと笑う。
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