4th.Saudade
「梨乃、クレープうまかった?」
「うん」
「今度また食いに来ような!」
「やだ。また遅くなる」
現に、今は夜の7時半。
クレープを食べるだけなのに、一体何時間かかってるんだ……。
「ごめんごめん」
祐は悪びれもせず、にこにこ笑ってる。
祐が笑ってるのはいつものことだけど。
「家に着くの、8時過ぎちゃうなぁ。梨乃、家に誰かいる?」
「いない」
うちは、両親が共働き。
父親はどっかのお偉いさんで、母親は水商売。
母親って言っても、3人目だけど。
その事情を知ってるから、祐は心配しているようだ。
「別にいつも一人だから、平気」
「でも夜ご飯、ちゃんと食ってないだろ? 梨乃のことだから」
……。
図星で答えられなくなって、俯く。
「うち来る? お袋が梨乃に会いたいって」
「でも、突然行くのはさ」
「お袋がおいでって言ってたんだ。駄目?」
祐のお母さんの性格は、よく知ってる。
言い出したらてこでも譲らない。
「じゃぁお邪魔しようかな」
「うんうん、そうしてよ!!」
というわけで、祐の家に行くことになった。
祐の家、久しぶりだな……。