4th.Saudade

祐の家に着くと、いきなりおばさんに抱きつかれた。

「梨乃ちゃぁん! 久しぶりねぇ。大きくなっちゃって……。
おばさん寂しかったのよ! さぁ、上がって上がって」

こういうのを、成す術がないと言うのだろう。
あたしは何も言えず、リビングに通された。
おばさんも祐も始終笑顔だ。

「そこらへんに座ってね! すぐ夜ご飯作るから!」

「あ、いえ、そんな……」

「駄目よ、食べなきゃ。女の子はしっかり食べて頑丈な体じゃないとね!
梨乃ちゃん、揚げ物すきだったかしら?」

「あ、はい」

「じゃぁ揚げ物にしましょうね! 少しお待ちなさいな」

すっかりおばさんのペースに乗せられて、夕飯をいただくことになった。

祐はその様子を、やっぱりにこにこした顔で見ている。

手持ち無沙汰なので、とりあえずソファーの前に座った。
祐も隣に座る。

人気のクイズ番組を見て、祐が本気で解いているのが滑稽でおもしろい。

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