4th.Saudade
父親も母親も滅多にいない、あたしの家。
もう慣れてるけど、やっぱり寂しい。
……そんなこと、意地っ張りなあたしは、口が裂けても言えないけど。
だからこういう『普通の家』にいると、すごくしあわせな気持ちになる。
憧れてるっていうのかな・
「あ! 小麦粉切らしちゃったわ。困ったわねぇ」
「俺買ってくるよ?」
「あら使えるわね! じゃぁお願い!」
おばさん、実の息子に『使える』って……。
夕飯を作ってもらってる立場なので、あたしも行こうと思って腰をあげる。
「梨乃ちゃんは待ってなさい。危ないでしょう」
「いえ、待ってるだけっていうのは悪いですし」
あたしがもう玄関に向かったので、おばさんは、やむを得ずという感じだった。
祐は、家を出てすぐ右に曲がった。
「何処行くの?」
「そこのスーパー」
「あぁ」
24時間営業の、小ぢんまりしたスーパーか。