4th.Saudade
祐の家へ戻ると、また玄関までおばさんが出迎えに来てくれた。
「わざわざごめんなさいねぇ。助かったわよ! すぐご飯作るからね!」
祐が小麦粉を渡すと、いそいそとキッチンのほうへ消えていった。
リビングへ行くと、祐はまたソファーに座った。
あたしはソファーの前の床に座った。さっきと同じように。
特に何を話すでもなく、ぼーっとテレビを見ていた。
祐だと気を遣わなくていいから、楽。
「梨乃ちゃん、ご飯できたわよ!」
「お袋! 俺も呼べよ!」
ダイニングテーブルに向かうと、向かって右側に二人分、左側に一人分のお箸が置いてあった。
……どこに座ればいいかな。
「梨乃ちゃんは、右奥でいいかしら? 前と同じところ」
「あ、はい」
「じゃ、俺梨乃の隣で」
各自席に着く。
懐かしいなぁ……。
中学の時、家出したあたしを迎えてくれた、祐とおばさん。
その時と同じ席。