4th.Saudade
「梨乃とここで初めて会ったの、もう一年前なんだね」
「そうだね」
「あの時、初対面なのにタイプじゃないって言い捨てられた」
「あー。そうだったね」
初対面は、最悪だった。
その葵が、今はすきなひとなんだ。
「あんな派手な格好してたら、普通引く」
「ひでぇ! 俺結構人気あるのに」
葵はあっけらかんと言った。
確かにもててた。先輩からも騒がれてたし。
天性の要領のよさで、うまく世の中渡ってるからね、葵は。
「俺、女の子にあんなに嫌がられたの初めてでさ。
必死で仲良くなろうとしたんだよね。
クラスとかでも付きまとってたし」
「あれ、かなりうざかったよ」
「今思うと、俺もそう思う」
そう言って二人で笑った。
葵はあの日あたしと会ってから、いくらあたしが嫌がっても話しかけ続けた。
その甲斐あって、今は普通に話してる。
他の男子はまだ嫌いだけど。