4th.Saudade

「梨乃とここで初めて会ったの、もう一年前なんだね」

「そうだね」

「あの時、初対面なのにタイプじゃないって言い捨てられた」

「あー。そうだったね」

初対面は、最悪だった。
その葵が、今はすきなひとなんだ。


「あんな派手な格好してたら、普通引く」

「ひでぇ! 俺結構人気あるのに」

葵はあっけらかんと言った。
確かにもててた。先輩からも騒がれてたし。
天性の要領のよさで、うまく世の中渡ってるからね、葵は。

「俺、女の子にあんなに嫌がられたの初めてでさ。
必死で仲良くなろうとしたんだよね。
クラスとかでも付きまとってたし」

「あれ、かなりうざかったよ」

「今思うと、俺もそう思う」

そう言って二人で笑った。

葵はあの日あたしと会ってから、いくらあたしが嫌がっても話しかけ続けた。
その甲斐あって、今は普通に話してる。
他の男子はまだ嫌いだけど。

< 20 / 52 >

この作品をシェア

pagetop